★.hack//SIGN−1の1★                         
                         


ナレ  .hack//SIGN#01『Role Play』     赤い鎧を着たまーろーたいぷの剣士Aの剣を、     大きな杖で受け止めた呪紋使いの少年・司-----二人、至近でにらみ合っている。 司  「……話すことはないよ」 剣士A「いや。この剣に賭けても−−−話してもらう」 司  「好きにすれば……」 ナレ  剣士Aが、司を圧倒的な力で突き飛ばした。     骨のような壁に叩きつけられた司、     息ができないほどの衝撃を受け。苦痛に顔を歪ませた。 司  「……」 剣士A「立てっ!」 司  「……」 ナレ  何か言おうとするが、声が出ない。剣士Aが咆哮!剣を振りかざして司に突進してきた−−と、二人の間に空気が揺らいで、     剣士Aがはじき飛ばされた。さらに、揺らぐ空気の壁の中から、     鉄アレイのような形をしたゲイ状の物体が姿を現した 剣士A「……なんだ、これは?」 司  「!?……」 ナレ  目の前にせり上がる雄大な砂丘を越えると−−−     その向こうは海で、砂浜に半ば砂に埋もれた巨大な携帯電話が立っている。      着信のベルが鳴り出した…     ベルの音ががこぼれて、−−−柱は筋肉繊維の束ごとく、     壁は内臓のごとく脈動し、じくじくと分泌液をしたたらせている室内−−−     床にうつぶせに倒れていた司の指がぴくりと動き、     気を失っていたらしい司が意識を取り戻した。 司  「……」 ナレ  焦点の定まらない目であたりを見回し、のそのそと体を起こした。     と、地面から引き離した手が、粘りのある糸を引く。 司  「(違和感)……?」 ナレ  手のひらを衣服になすって、立ち上がる。 司  「(呟く)なんだっけ……」 ナレ  台座に置かれた宝箱をぼんやりと見た。そこへ、ドデカイ剣を背負った女性重剣士・ミミルが入ってきた。 ミミル「おっと。先客がいたのかぁ……はじめまして、ミミルでっす」 司  「……」 ミミル「どうした?大丈夫?」 司  「……」 ミミル「ソロの呪紋使いって、珍しいね___あんた、結構強いんだ……」 ナレ  司は答えず、懐からアイテムを取り出し、その場から転送__消滅した ミミル「うわ。感じ悪ぅ……お宝、置いてってくれたから、ま、いいけど」 ナレ  すぐに宝箱を大ぶりの剣で叩いた     風車の傍ら、井戸の縁に腰掛けた司、杖にもたれて考え事をしている。 司M 「何してるんだっけ……僕は……どこにいる?」 ナレ ふと顔を上げると、表情変化、赤い鎧を着た3人の剣士が近づいてくる    司は、井戸の縁から降りて警戒した。    剣士のリーダーらしき男が、両手をあげて敵意のないことを示す 剣士A「やりあうつもりはない。我々は紅衣の騎士団・第13分隊の者だ___噂ぐらいは知ってるだろう?」 司  「……」 剣士B「紅衣の騎士団は勇気、礼節、寛容を重んじ、     “ザ・ワールド”の正常な運営を助けることを目的に結成された」 剣士C「我々は“ザ・ワールド”内での不正行為に、常に目を光らせている」 司  「……関係ないよ」 剣士A「いや、“ザ・ワールド”に集うもの全員の問題なのだ。     協力をお願いしたい。数日前のことだが__君は猫を模したPCと一緒だったはずだ」 司  「猫……」 草原 司  「(自問するように)誰……?」 剣士B「君と一緒のところを見た者がいる」 剣士C「あれは、明らかに違法にエディットされたキャラだ」 剣士A「このまま見過ごすわけにはいかない。が、我々としては、事を荒立てるつもりもない」 ナレ  司が何かを言いかける 剣士B「彼__彼女か?どっちかわからんが、情報がほしい。どこで会える?」 剣士A「君にはけして迷惑をかけない。それは約束する」 ナレ  司の方に歩み寄り、何か言おうとする司、ついにそれは言葉にはならず__ 司  「……!」 ナレ  ふいにその場から転送・消滅する」 剣士B「……逃げた」 剣士A「監視の必要があるか……」 高山都市・カオスゲート付近 ナレ  転送・出現した司、ほぼ同時に転送されてくるキャラがあって、一瞬身構える。     が、そこに現れたのはミミルで、司はふと緊張を解く。    と、ミミルは突然司の腕をつかんで一方に引っ張っていく 司  「な___」 同・浮島 ナレ  高空を流れる薄雲…風にたなびく呪紋を施された吹き流し…     岩肌のペイントされた呪紋。     眼下に広がる雲海などあって__広場のテラスで、ミミルと司の姿があった ミミル「あんたさ、いっつもあんなことしてるわけ?」 司  「……」 ミミル「また、ダンマリか……」 ナレ  司は答えず、杖の先端で足下を這う虫の進路を邪魔したりしている ミミル「あのさ……見ちゃったんだよね、さっき。あんたが紅衣の連中の前から消えるとこ」 司  「(ぽそっと)……うざい」 ミミル「?__ごめん。聞こえなかった」 司  「……」 ミミル「判っててやってんのかもしんないけど、よくないよ。ああいうの」 司  「どうせ、ログアウトしちゃえば関係ないもん」 ミミル「違うっ!そういうことじゃなくって__」 司  「……」 ナレ  まっすぐにミミルを見て、その視線にミミルはひるむ ミミル「なに?」 司  「どうせ、言っても判んないから、いい」 ナレ  司はその場を離れようとする ミミル「(追って)キミさ、あんなこと続けてたら、居づらくなっちゃうよ。     今度、あの連中に会ったら、どうするわけ?」 ナレ  司はミミルに向き直り、暗い笑みを浮かべる 司  「それはそれで__おもしろい」 ミミル「え……?」 司  「関わるのがイヤだったら、しばらくアクセスしなきゃいいだけさ」 ミミル「そんなの間違ってるよ……!」 同・カオスゲート ミミル「ねぇ、それでいいわけ?」 司  「人それぞれ、人の数だけ、遊び方があっていいんじゃない」 ナレ  と、ログアウトしようとするが… 司  「……?」 ナレ  違和感を感じて固まる ミミル「……?」 司  「ぼく、あんた、嫌い」 ナレ  そう言って、ゲート内に消えた ミミル「な…なんだとぉ……ムカツク……!」 1の1終